経絡と顎関節症
渡辺東洋医学研究所
(1)人体の可動性と機能低下の一般理論(仮説)
人体を構成する細胞、組織、器官、臓器は、腸の蠕動運動のような自動運動をしているが、その可動域が制限されると、機能低下が起こる。
可動域の制限には、
(a)外傷に伴う硬結が原因で起こる周辺組織の自動運動の可動域の制限、
(b)硬結によって引き起こされる経絡反応が原因で起こる組織や器官、臓器の自動運動の可動域の制限、
(c)椎間板の萎縮や捻れに伴い、神経が椎間板周辺で圧迫され機能低下することが原因で起こる組織や器官、臓器の自動運動の可動域の制限、
(d)臓器の機能低下が原因で起こる組織や器官、臓器の自動運動の可動域の制限、
(e)腫瘍などが原因で起こる組織や器官、臓器の自動運動の可動域の制限、
などがある。
(a)外傷に伴う硬結が原因で起こる周辺組織の自動運動の可動域の制限の典型的な例としては、足首を捻挫して、関節、腱、靭帯、軟部組織、毛細血管などが損傷したときに修復される過程で周囲軟部組織が硬くなって硬結ができ、周辺組織の自動運動の可動域に制限が生じるケースがある。
(b)このとき、例えば硬結が胃経上にあると、胃経に支配される組織や器官、臓器(胃)の自動運動の可動域に制限が生じる。
(c)椎間板の萎縮や捻れに伴い、神経が椎間板周辺で圧迫され機能低下することが原因で起こる組織や器官、臓器の自動運動の可動域の制限の例としては、肝機能低下などで頸椎の周囲の筋肉が萎縮し、頸椎6番と7番の間の椎間板から出る神経が圧迫されると、上顎の自動運動の可動域の制限が生じる。
(d)臓器の機能低下が原因で起こる組織や器官、臓器の自動運動の可動域の制限の例としては、肝機能が低下したとき、筋肉や内臓全般が萎縮し、機能低下が起こる。特に眼球は肝機能低下に対し、鋭敏に反応し視力の低下が起こることが多い。
(e)腫瘍などが原因で起こる組織や器官、臓器の自動運動の可動域の制限については説明の必要がないと思われるが、腫瘍を手術で切除した場合も、手術の痕に不可動な部分が生じ、周辺の組織の自動運動の可動域に制限が生じるのが一般的である。
可動域が縮小した原因を取り除き、可動域を元に戻せば、機能も元に戻る。しかし、手術や脳梗塞、心筋梗塞のように、正常な器官の一部が切除されたり、壊死した場合、元に戻すことができないないので、機能の復元に限界がある。
(2)経絡とは?
人体は、正常な状態においては全身に気が流れ、皮膚や筋肉、関節、骨、内臓など全ての組織がモワモワ動いている。このモワモワ動いている状態を、東洋医学では、「気が流れている」、動いていない状態を「気が流れていない」と言う。
怪我や病気で硬結(筋肉や骨、関節などの組織が硬くなったもの)が生じると、硬結の生じた部分の可動性が低下する。このとき、連動して可動性が低下する皮膚や筋肉、内臓、骨などの連続した帯状の流れを経絡と呼ぶ。例えば、手の親指から肺経と呼ばれる経絡出ているので、親指を突き指すると、指に硬結ができ、少商から雲門、中府の間の皮膚や筋肉の可動性が悪化すると共に、肺の可動性が低下し、肺の機能が低下して、肺経の支配下にある喉や鼻、皮膚が弱くなる。
気が分かる人は、触診で、気が止まっている部分や気の流れが悪化している部分が帯状の連続性を持っていることを確認出来る。
この流れを単純化したのが経絡図である。肝経、心経、脾経、肺経、腎経、胆経、小腸経、胃経、大腸経、膀胱経、心包経、三焦経、督脈、任脈の14経絡が載っているものが一般的である。
(3)経絡の連鎖と人体の恒常性
[人体の恒常性とは]
人体を構成する細胞は、脳細胞や心筋の細胞のようにのように100年を超えて生き続けるものもあるが、小腸の粘膜細胞や白血球のように数日の寿命しかないものもある。しかし、寿命の短い細胞は次々と再生されるので人体の恒常性が保たれる。
人体全体も、変形、移動、食物の消化吸収、排泄など常に変化しているが、人体の恒常性は保たれる。
怪我や疾病は人体の恒常性を破綻させようとするが、修復されて、恒常性が保たれることが多い。
人体の恒常性を維持するために、自律神経系、免疫系、内分泌系のシステムがあることは知られているが、経絡が人体の恒常性を保つために存在することは理解されていない。
[自律神経失調症と内臓の相対的な機能低下]
自律神経失調症と言われる人を東洋医学の脈診で診断してみると、腎虚や肝虚、心虚などと呼ばれる内臓の機能低下が見られる。腎虚は腎機能の低下を、肝虚は肝機能の低下を、心虚は心機能低下を意味するが、現代医学で言われるような絶対的な機能低下ではなく、五臓六腑と言われる他の内臓の機能に対する相対的な機能低下を意味する。
内臓の機能が正常な状態を10とすると、全ての内臓が7まで低下している場合、多少の体力低下が感じられても、症状は現れない。ところが、東洋医学的な方法で治療し、心臓が7のままで、他の臓器が全て8になると動悸や胸痛がすることがある。
このような他の内臓の機能に対する相対的な機能低下で起こる症状は病院の検査では分からない。首、肩の凝り、耳鳴り、手足の冷えや痺れ、動悸、息切れ、多汗症、目眩、喉や胸の違和感、高血圧、糖尿病など自律神経失調症や成人病などのカテゴリーに入る疾病で、病院で原因が特定できないものは、内臓の相対的な機能低下で起こるものが多い。
[内臓間のバランスを自動修復するシステムとしての経絡]
経絡のシステムは、経絡治療のためにあるのではなく、怪我や病気などで、臓器や器官の機能低下が起きたとき、内臓間のバランスを自動修復するためにある。例えば、足首を捻挫し、肝経に支配される筋肉や内臓の可動性が低下すると、肝経→心経→脾経→肺経→ 腎経の順で、それぞれの経絡に支配される筋肉や内臓の可動性の低下が起き、機能低下が分散され、臓器や器官のバランスが修復される。
体力が十分にあるときは、経絡システムによる分散で、問題は生じない。しかし、繰り返して怪我をしたり、高熱を繰り返したり、高齢になったりすることで臓器の機能低下が限界を超えると、経絡のバランスが崩れ、自律神経失調症を始めとして、現代医学では根本的な解決ができないさまざまな病気が起こる。
崩れた内臓のバランスを正常な状態に戻すには、脈診などの東洋医学的な診断法で、問題経とその原因となる不可動の部分を見つけて治療し、問題経に支配される皮膚や筋肉、内臓、骨などの自動運動が正常に行われるように(気が流れるように)すればよい。
(4)経絡の連鎖
肝経、心経、脾経、肺経、腎経、胆経、小腸経、胃経、大腸経、膀胱経、心包経、三焦経、督脈、任脈の14経絡の中で、古典的な東洋医学の理論において、連鎖関係が認められるのは、肝経、心経、脾経、肺経、腎経、胆経、小腸経、胃経、大腸経、膀胱経の10経絡である。
気 が分かったり、脈診ができたりすると、特定の経絡の気の流れを変化させ、他の経絡にどのような変化が生じるかを検証することができる。以下その検証結果。
①気功整体根治療術や鍼灸など、経絡のバランスの診断と治療が可能な治療法で心機能低下が見られる患者を治療するとき、心経に支配される組織や器官、内臓等に問題が見られない場合、肝経に問題があることが多く、肝経上の硬結を緩めると、肝経と心経の気の流れが良くなり、肝機能と心機能が上がる。この現象は、肝経上に硬結が生じ、肝機能が低下すると、連鎖して心機能が低下することを示している。肝機能が下がると、筋肉が萎縮し、胸部や腹部が縮み、心臓の可動域が制限されるため、心機能が低下するのが原因である。
②肝機能低下が見られる患者を治療するとき、肝経に支配される組織や器官、内臓等に問題が見られない場合、腎経に問題があることが多く、腎経上の硬結を緩めると、腎経と肝経の気の流れが良くなり、腎機能と肝機能が上がる。これは、腎経上に硬結が生じ、腎機能が低下すると、連鎖して肝機能が低下することを示している。
腎機能が低下し、腎経が支配する足の筋肉の可動性が低下すると、腎経と隣接して走る肝経に支配される筋肉の可動性が同時に低下するのが原因と思われる。
③腎機能低下が見られる患者を治療するとき、腎経に支配される組織や器官、内臓等に問題が見られない場合、肺経に問題がある場合が多く、肺経上の硬結を緩めると、肺経と腎経の気の流れが良くなり、肺機能と腎機能が上がる。これは、肺経上に硬結が生じ、肺機能が低下すると、連鎖して腎機能が低下することを示している。
肺の機能が上がると胸部の肋骨が柔らかくなって可動性が上がる。腎経は、肋骨を横切るように、胸部の中央の両脇を流れているので、肋骨の気の流れが良くなると、腎経の気の流れが良くなり、腎臓の機能が上がる。
上記のように触診で皮膚や筋肉、骨、内臓の気の流れ(モワモワとした動き)が分かると、経絡の連鎖関係を調べ、経絡の古典理論が正しいかどうか確認することができる。
< 以下触診により調べた連鎖関係>
④肝心脾肺腎の五臓には、図のように(a)肝経が虚すると、心経が虚し、心経が虚すると、脾経が虚するのような、肝→心→脾→肺→腎→肝の順で、正の連鎖関係があり、特定の内臓だけに著しい機能低下が起こらないようになっている。
(b)治療においても、肝経の気の流れを改善すると、心経の気の流れが改善し、心経の気の流れを改善すると、脾経の気の流れが気の流れを改善するというような、肝→心→脾→肺→腎→肝の順で、正の連鎖関係がある。
(c)肝経の気の流れを良くすると、腎経の気の流れが悪くなり、腎経の気の流れを良くすると、肺の気の流れが悪くなると言うように、肝→腎→肺→脾→心→肝の順の負の連鎖関係がある。
⑤胆小胃大膀の五腑においては、(a)図のように胆→小→胃→大→膀→胆の順で、「→」の左側の経絡が虚すると、右側の経絡が虚すという正の連鎖関係があり、特定の内臓だけに著しい機能低下が起こらないようになっている。
(b)治療においても、胆→小→胃→大→膀→胆の順で、「→」の左側の経絡の気の流れを改善すると、右側の経絡気の流れを改善するという正の連鎖関係がある。
(c)心経、小腸経、大腸経は、同時に気の流れが良くなったり、悪くなったりするので、同一の経絡と考えても、実質的な問題は生じない。そのため、五臓において成り立つ「②(c)」の負の連鎖関係は成り立たない。例えば、小腸経が虚していると、大腸経と心経も同時に虚している。小腸経に気を流すと同時に大腸経と心経に気が流れる。そのとき、一瞬、胆経 の気の流れが悪くなるが、大腸→膀胱→胆経の順で気の流れが良くなるため、胆経の気の流れは、最終的には最初の状態とほとんど変わらない。
(5)経絡の連鎖と潜在的顎関節症
関節や骨が柔らかい幼児期に、高熱などが原因で、肝機能が大きく下がると、胸部が萎縮し、心機能低下による激しい経絡反応が起こる。経絡の連鎖は1回や2回では止まらず、数回~数十回連続して起こる。心臓が左サイドに偏っているため、体の左側を中心に、体が萎縮して、捻れていく。連鎖が6~7回に達すると、肝機能による筋肉の萎縮に伴い、肝臓自体の萎縮による激しい肝機能の低下が起こり、体の右サイドを中心に、体が激しく捻れていく。潜在的顎関節症の人で、顎関節に大きな歪みや関節円板転移が起きている人の多くは、このときに問題が生じたものと思われる。
潜在的顎関節症の人は、幼児期に経絡の連鎖反応が起き、内臓全般が萎縮して機能低下を起こしているので、中学校や高校で、捻挫や骨折などの怪我をすると、そのとき生じた硬結を起点とする経絡の連鎖反応によって引き起こされる内蔵の機能低下で、自律神経失調症や不定愁訴、鬱病など精神性疾患で悩んだり、病院では原因が分からない病気になったりすることが多い。
また、20才を過ぎると体力が徐々に低下し始め、年齢が上がると低下が大きくなり、問題が生じやすくなる。特に、35才を超えると、腎臓の機能が急激に低下するため、更年期障害を初めとする様々な問題が生じるようになる。
女性は、妊娠すると全身が緩むが、このとき緩まない硬結があると、全身が柔らかくなっているので、この硬結を起点として経絡の連鎖反応が起き、体全体が捻れ、体が硬くなる産後半年あたりから自律神経失調症を始めとする様々な問題が生じることが多い。
(6) 多重層の構造を有する潜在的顎関節症
潜在的顎関節症の人の頸椎の3番を治療して下顎が緩み、頸椎の7番を治療して上顎が緩むと、顎関節症の随伴症状が改善することが多いが、その後再び頸椎の3番の気が流れが止まり、症状が再び出ることがある。
このタイプの人は、頸椎の3番と7番を交互に治療することを繰り返すと、治療回数に応じて、体力が上がり、次第に随伴症状も弱くなっていく。
このタイプの人は、関節や骨が柔らかい幼児期に、潜在的顎関節症が多重層に生じてしまっているため、このような反応が起きると推定される。
(7) 心臓防御反応
《身体的な心臓防御反応》
心機能が低下すると、経絡の連鎖で、足の親指から出ている脾経(図1、図2)が虚し、脾経に沿って足の親指の爪の付け根にある隠白から公孫までが瞬時に硬くなり、足の親指の可動性が低下するのに連動して、他の足の指も可動性が低下する。このとき、足の指から出ている肝経、胃経、胆経、腎経、膀胱経が虚し、内臓の機能低下が起こる。他の経絡も、経絡の法則で連鎖して虚するので、内臓全般の機能低下が起こり、心臓にかかる負担は軽減される。
《精神的な心臓防御反応》
精神的には、心臓に負担がかからないように、一人でひっそりしているのを好むような傾向が強くなる。例えば、猜疑心が強くなって、他人の言うことが信じられなくなり、人間関係が悪化したり、他人と話をするのがめんどくさくなったりする。
また、普段は気にならないことが気になったり、何か気になると、頭から離れなくなったりする傾向が強くなり、悪化すると仕事や日常生活に問題が生じるようになる。
他方、人間関係が悪化することに対する代償作用として、他人に少しでも非難されるようなことは避けようとする傾向が強くなり、「他人から離れたい」「他人からよく思われたい」と言う相反する欲求を達成しようとするため、精神的、肉体的努力を限界的にすることが多くなる。
他人の何気なく言った言葉が、自分に対する否定的な評価として感じられる場合、現在の努力を超える努力をすることができないため、相手に対する攻撃的な議論をすることで、自己を正当化しようとする傾向が強くなったり、言った相手を許せないと言う気持ちが長期にわたって続いたりすることがある。
病状が進み、気力や体力が限界を超え、攻撃的な議論をする気力もなくなると、「生きているから苦しまなければならない」のように、自己存在を全ての苦しみの原因として考える傾向が強くなり、自殺を考えたり、発作的にリストカットをしたりするように なる。
《精神的な心臓防御過剰反応》
この反応が強くなり、日常生活に問題が生じるようになると、病状に応じて、鬱病、不安神経症、心臓神経症、パニック障害、対人恐怖症、強迫神経症、赤面症、多汗症などと呼ばれる。
また、交感神経が亢進して、感覚が異常に鋭敏になり、普通の人が感じないレベルの痛みを耐えがたい痛みとして感じたり、内耳のわずかな機能低下で、普通の人が感じない、めまい、ふわふわ感、吐き気などを感じたり、人前で緊張すると手が震えたりするようになることがある。
これらの病気は、症状に連続性があるため明確な境界線を引くのが難しいだけでなく、心機能を上げることによって、症状が改善するという共通点がある。
《心臓防御反応と顎関節症》
関節や骨が柔らかい幼児期に、心機能が低下して、経絡の連鎖で脾虚になると、骨や関節が捻れるように歪み、付随する筋肉が、骨の歪みと捻れに伴って、骨に巻き付くように引っ張られて移動する。また、関節や骨が柔らかいため、心→脾→肺→腎→肝→心→脾→肺→腎→肝と言う連鎖が急激に進む。頭部や顎関節も脾虚で繰り返し歪むので、顎関節にある関節円板の転移の多くはこのときに起きるのではないかと思われる。
(8)経絡と頭蓋骨の可動性
頭部は、右図のように督脈、膀胱経、胆経、三焦経、小腸経、大腸経、胃経、任脈の9経絡が流れている。顎関節症に伴う心虚脾虚で頭蓋骨が歪み、可動性が低下すると、人体を支配する14経絡の中の9経絡の可動性が低下するため、経絡間に激しい連鎖反応が起こり、急激な内臓の機能低下が起こる。
このとき、肝機能低下で筋肉が萎縮し、頸椎や膝、足首などの関節がロック)し、体が元の状態に戻らないと、内臓の機能は低下したままになる。
特に潜在的顎関節症の人のように、幼児期に内臓の機能低下が生じているが、日常生活に大きな問題が生じていない人は、内臓の機能がさらに低下すると、機能低下が限界を超え、突然、医学的に原因が不明な症状が現れることが多い。
(9)頸椎における末梢神経の機能低下と頭蓋骨の可動性
末梢神経は、周辺の筋肉が萎縮して硬くなると、機能低下を起こす。
硬結に赤外線レーザーのプローブを当てていると、硬結が溶けたとき、患者が痛みを感じ「どうして最後にグリッとやって痛くするのですか」と聞くことがある。もちろん「最後にグリッとやって痛くする」などということはしていない。
最初プローブを当てた状態では、硬結部分は筋肉が萎縮して硬くなり神経が機能低下を起こしているので、軽い圧迫感は感じても、接触感や痛みは感じない。しばらくして、硬結が緩むと、プローブの先がわずかに動くが、神経の機能が正常に戻っているのでプローブの動きや痛みを感じるのである。
頸椎の椎間板周辺が腎虚や脾虚で異常に硬くなると、手を支配する神経が圧迫され、手や腕の筋肉が硬くなったり、痛みが出たり、痺れたりする。MRIの検査で明確な異常が見られ、手術をするしかないと言われたものでも、腎機能を上げ、骨や関節を緩める、神経が解放されて、症状が消失することがある。
また、頸椎の椎間板周辺が硬くなると、頸椎からは頭部を含む周辺組織を支配する神経が機能低下を起こし、周辺組織が硬くなるので、頭痛や首、肩凝りが起こる。
頸椎の椎間板周辺が硬くなり、椎間板から出ている神経が機能低下を起こすことによって起こる症状は、原因となる硬結を緩め、近接する頸椎の可動性が上がると、症状が改善する場合が多い。しかし、翌日あるいは数日してから、症状が再び出ることが少なくない。骨や関節全体が硬くなっているため、一度緩めても、体が萎縮して、関節が捻れると、再び可動性が失われてしまうためである。
人体は、気温が高く、内臓が活発に動いている昼間は広がっているが、夜間は縮み、気温が最も低い午前4時頃、体の萎縮や随伴する関節の捻れが著しくなる。このとき、緩めた硬結が硬くなるとともに、近接する頸椎がロックし、問題が再発すると場合が多い。このようなタイプの人は、腎機能を上げ、骨や関節を柔らかくすると、症状が改善することが多い。
(10)腎虚と顎関節症
《骨や関節の萎縮》
腎機能が低下すると骨や関節が萎縮して硬くなり、骨の可動性が低下する。頭蓋骨の萎縮が起きると、開口部がある目の周辺と、頭蓋骨で囲まれている耳の周辺、顎関節などが大きく歪んで硬くなり、可動性が低下する。可動性の低下に伴う組織や器官の機能低下が大きいと、目にくまができたり、耳鳴り、めまい、聴力の低下、顎関節症などが起こることがある。
このような症状は医学的に正常な範囲での腎臓の機能低下で起こるため、血液検査などで原因を突き止めることができないが、東洋医学には脈診という診断法があり、腎機能低下(腎虚)を確認することができる。
腎機能が低下すると、連鎖して、肝機能の低下が起こり、筋肉が萎縮する。腎機能の低下による骨の萎縮は、肝機能の低下による筋肉の萎縮に比べると、わずかなので、肝虚に伴って生じる脾虚により関節が捻れながら縮むことによって、萎縮の差が緩衝される。骨や関節が柔らかい幼児期に腎虚になると、関節の捻れや随伴する体の歪みがひどくなる。顎関節症に伴う顎関節の歪みや関節円板の転移は、幼児期の腎機能低下によって引き起こされた肝虚脾虚や心機能低下による心虚脾虚に起因する場合が多いと推定される。
《腎機能低下の原因》
捻挫や骨折、打撲、火傷などで、腎経に問題が生じると、腎臓の可動性が低下し、腎機能の低下が起こる。
溶連菌感染症、リウマチ熱、腎炎は、直接腎臓に問題を起こし、著しい腎機能を低下を引き起こすが、病気から回復すると、著しい機能低下が起こっているにもかかわらず、はっきりした自覚症状がないことが多い。また、肺炎や喘息、アトピー性皮膚炎などの病気にかかると、肺機能が著しく低下し、経絡の連鎖で腎機能が著しく低下してしまうことが多いが、同様に回復後の自覚症状はないのが一般的である。
腎臓は肝臓とともに余裕がある臓器と言われ、腎の機能が70%低下しても、症状が出ないため、血液検査などで腎機能の低下が分かったときには、透析間際になっている。
35才ぐらいから加齢による腎臓の機能低下が著しくなる。40才以降に頻発する40肩や更年期障害は腎機能低下が原因の一つとなっている。
《腎機能低下の治療法》
古来、中国では腎機能 の低下が老化の原因とされて来たので、歴代の皇帝は不老長寿を求めて、腎機能を上げる方法を鍼灸師や漢方医に研究させた。しかし、21世紀になっても、透析患者数が20万人を超えるのが実態で、現代医学には、医学的に確認できるレベルまで腎機能を上げる技術がなく、鍼灸や漢方の治療も同様に限界があることは明確である。
腎機能の低下は、捻挫や骨折、打撲、火傷などで腎経に問題が生じると、腎臓の可動性が低下して起こるのだが、透析間際まで腎機能が低下した人の腎経に支配される組織や臓器の可動性を奪っている硬結を治療しても、一時的に腎機能が上がるだけで、すぐ治療前と同じレベルに腎機能が落ちてしまう。腎機能に効くという漢方薬や健康食品を飲んでも同じようなことが起きる。
腎機能が低下した人を鍼灸や漢方薬で治療すると、一時的に腎機能が上がる。すると腎機能の上昇に伴って、骨や関節がわずかに緩み、体型がわずかに変化する。そのわずかな変化に改善した腎機能の余裕分が吸収され、腎機能は治療前とほとんど変わらない結果になる。
私が知っている限りにおいては、昭和初期に群馬県の赤羽幸兵衛という人が考案した灸頭鍼を使った腎の治療法が最強である。十数年前に一度治療を受けたことがあるが、明確に腎機能が上がる。治療点は腎兪、志室、肓兪であり、これ以外のツボを治療すると、体の変化が大きくなり、せっかく上がった腎の機能が体型の変化で吸収されてしまう。しかし、この方法を持ってしても、透析間際まで腎機能が低下した人の腎機能を上げるのは難しい。
私は、この難問を江戸時代に腎臓病に使われた治療法を参考に、失眠穴を治療することで解決した。この方法だと透析間際でも僅かではあるが確実に腎機能を上げることができる。その後の研究で、腎機能に直接関係した治療点が5つ(頭の腎兪(左右)、耳の腎兪(左右)、大腎兪)あることを発見、腎機能の治療技術はさらに向上した。
(11)操気色彩療術と腎機能の治療
操気色彩療術の創始に伴い、色と経絡の関係が明確になり、腎経をラピスラズリーなどの青色のパワーグッズを使って治療するようになると、腎機能の治療技術は飛躍的に向上し、顎関節症や手足の痺れは、腎臓の機能を上げただけで、症状が改善するケースが見られるようになった。腎機能の改善に伴い顎関節症が改善するのは、上顎や下顎を支配する神経が出ていると推察される頸椎の3番と7番に隣接する椎間板が腎機能が改善されるのに伴って若干緩み、椎間板で圧迫されて機能低下していた神経の機能が上がるのが原因と思われる。
手足の痺れが改善するのは、頸椎から手を支配する神経が、腰椎や仙骨から足を支配している神経が出ているので、頸椎や腰椎、椎間板が緩むことによって、手足を支配する神経の機能が回復するためと思われる。
(12)ソロモン系パワーグッズ腰椎5と腎機能の治療
人間は二本足で歩行するため、腰椎の5番に硬結が生じる。怪我や病気で体が萎縮するごとに、その硬結が固くなり、全身の中でもっとも固い硬結になっている。人は誰でも腰椎の5番に硬結が生じているため、胎児は、両親の邪気で、腰椎5番に硬結が生じ、1歳ぐらいになって歩き始めると、硬結はさらに固くなって、強い邪気を出すようになる。腰椎5番の問題は、親から子に受け継がれ、世代が交代するに従って硬くなって行く。
腰椎5番の硬結は異常に硬いため、鍼灸や整体などの東洋医学的な治療を駆使しても、硬結の表面をわずかに緩めるだけで終わってしまう。
この部分が緩まないと、他の体の部分を緩めて体が楽になっても、風邪などで熱を出したり、捻挫をしただけで、.腰椎の5番の硬結を中心に、全身が縮んでねじれ、腰椎の5番の硬結の固さに近い硬結が全身に生じてしまう。東洋医学的治療で一時的には良くなるが、しばらくすると再発するような症状は腰椎の5番の硬結が関係している可能性が高い。
また、二本足で歩行する人間は、腰椎の5番の硬結を基点とする経絡の連鎖で、腰椎の5番の硬結に近い固さの硬結が全身に生じていることが理論的に推察される。このレベルの硬結は深部にあるので、体表に近い部分が緩んでいれば、健康に大きな問題を与えないことが知られている。しかし、肺虚で体表上の気の流れがほとんどなくなったり、体力が限界的に低下したりすると、腰椎5番の硬結とそれを基点としてできた全身に生じている硬結が問題を起こすようになる。現代医学で原因が分からず、東洋医学を駆使しても改善しない症状は、この腰椎の5番の硬結が緩まないためである可能性が高い。
ソロモン系パワーグッズ腰椎5で、腰椎5番を緩めると、腰椎5番に隣接する椎間板から腎臓に神経が出ているらしく、腎機能が大きくあがり、腎虚で固くなった肓兪が緩み、腸の機能が上がる。腹部が緩むと連動して胸部が緩み、胸部の中央を縦に走る任脈とその両脇を走る腎経の気の流れが急激に改善する。さらに、腰椎5番が緩むのに連動して、頸椎1番とその周辺の後頭部が緩む。後頭部が緩むと連動して 胸部が緩むので胸部を走る腎経の気の流れは、さらに良くなり腎機能が上がる。
胸部の可動性が上がると、肺の可動性が上がり、肺機能が上がる。すると、経絡の連鎖で腎機能が上がる。
(13)ソロモン系パワーグッズ肺兪と腎機能の治療
腰椎5番の可動性が悪化すると、連動して、頸椎1番の可動性が悪化し、後頭部が萎縮する。後頭部が萎縮して可動性が悪化すると、連動して胸部が萎縮して可動性が悪化し、肺の可動性が悪化して機能低下が起こる。肺の機能低下に伴い、肺経に属する皮膚が萎縮して可動性が低下する。すると、その下の肝経に属する筋肉の可動性が低下し、さらにその下の腎経に属する骨や関節の可動性が低下する。
この一連の反応は、「肺の機能低下に伴い、呼吸によって吸収される酸素の量が低下した場合、筋肉や関節、骨の可動性を低下させることによって運動量を制限し、酸素の消費量を低下させるためのシステムとして働いている」と考えられる。
ソロモン系肺兪は、肺の機能と直接連動するツボ、肺兪を緩めることで、肺の機能をあげ、皮膚を緩め、さらに筋肉、関節、骨を緩め、胸部の可動性を上げ、胸部と連動する後頭部を緩め、頸椎1番を緩め、腰椎5番を緩めるパワーグッズとしての機能を持っている。
全身の皮膚の可動性が上がるので、皮膚上では全ての経絡に気が流れている状態になる。そのため、経絡に決定的な問題が生じないので、アトピーや喘息、鼻炎、喉の違和感など肺機能の低下によって起こる病気だけでなく、パニック障害などの発作型の病気や神経症やうつ病などに伴う不定愁訴に有効である。
肺の機能が上がると、経絡の連鎖で腎臓の機能が上がる。この余裕分は、筋肉や骨、関節が緩むときに消費されるので、体の変化は、ソロモン系腰椎5で治療した場合に比べると穏やかである。骨や関節が緩むとともに腰椎5番が緩むと、ソロモン系腰椎5で治療したときのように、腎機能が大きくあがり、腎虚で固くなった肓兪が緩み、腸の可動性が上がる。ソロモン系腰椎5に比べると、この変化も穏やかである。
(14)肝機能低下と顎関節症
幼児期に高熱を出すと、肝臓は熱に弱いので、肝機能低下が起こることが多い。肝機能低下が起こると、全身の筋肉や内臓が萎縮する。胸部が萎縮して肋骨の可動性が低下すると、心臓の可動域が制限を受け、心機能低下が起こるので、心臓がある左側が心虚による経絡の連鎖で激しく反応し、体の左側が萎縮して捻れる。経絡の連鎖で肝機能低下がさらに大きくなり、肝機能低下による肝臓自体の萎縮で肝機能が激しく低下するようになると、肝臓が右側に偏在するため、右側が左側よりさらに大きく萎縮して捻れるようになる。この段階に入ると、肝機能低下による胸部の萎縮で、心機能低下が生じ、「人と接するのが億劫」「何か気になると頭から離れない」などの鬱的症状がでたり、交感神経の亢進に伴い感覚が鋭敏になり、普通の人が感じないレベルの痛みを感じたり、手足などに異常に汗をかくようになったりすることが多い。
幼児期に肝機能低下が起こり、体の左側が捻れている場合、普通、痛みや不快感に慣れてしまっているので、症状を感じない。この状態で、成長してから風邪や怪我などが引き金になって肝機能低下が起こり、肝臓の萎縮が肝機能低下を起こすと、右側だけに症状がでるようになるとともに、心機能低下に伴う鬱的症状や交感神経の亢進に伴う原因不明の痛みを感じるようになることがある。
腕の筋肉が肝機能低下で縮んだとき、手首や肘で手の薬指から出ている三焦経が支配する関節が部分的にロックすると三焦経が虚し、頸椎の3番の可動性が低下すると、顎関節症になることがある。
(15)脾虚と顎関節症
心臓の機能が低下すると、脾経が虚し、頭蓋骨を含む全ての関節が歪んで関節と接する骨と筋肉の可動性が低下し、全ての内蔵の機能が瞬時に低下し、心臓の負担を軽減する。
脾虚になると、全ての関節が捻れて歪む。筋肉や骨は、相対的にあるべき位置があり、その位置から離れるにしたがって硬くなる。脾虚によって関節が捻れて歪むと、筋肉や骨は、あるべき位置から遠ざかるため、硬くなり、歪みがひどいと、骨は石のように硬くなり、筋肉はカルシウムが沈着して、骨化する。関節円板の転移は、顎関節の歪みとともにこのとき起こると推定される。
顎関節症と人体の可動性 ホーム >6.経路と顎関節症