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(1)人体の可動性と機能低下の一般理論(仮説)


人体を構成する細胞、組織、器官、臓器は、腸の蠕動運動のような自動運動をしているが、その可動域が制限されると、機能低下が起こる。

可動域の制限には、
(a)外傷に伴う硬結が原因で起こる周辺組織の自動運動の可動域の制限、
(b)硬結によって引き起こされる経絡反応が原因で起こる組織や器官、臓器の自動運動の可動域の制限、
(c)椎間板の萎縮や捻れに伴い、神経が椎間板周辺で圧迫され機能低下することが原因で起こる組織や器官、臓器の自動運動の可動域の制限、
(d)臓器の機能低下が原因で起こる組織や器官、臓器の自動運動の可動域の制限、
(e)腫瘍などが原因で起こる組織や器官、臓器の自動運動の可動域の制限、
などがある。

(a)外傷に伴う硬結が原因で起こる周辺組織の自動運動の可動域の制限の典型的な例としては、足首を捻挫して、関節、腱、靭帯、軟部組織、毛細血管などが損傷したときに修復される過程で周囲軟部組織が硬くなって硬結ができ、周辺組織の自動運動の可動域に制限が生じるケースがある。
(b)このとき、例えば硬結が胃経上にあると、胃経に支配される組織や器官、臓器(胃)の自動運動の可動域に制限が生じる。
(c)椎間板の萎縮や捻れに伴い、神経が椎間板周辺で圧迫され機能低下することが原因で起こる組織や器官、臓器の自動運動の可動域の制限の例としては、肝機能低下などで頸椎の周囲の筋肉が萎縮し、頸椎6番と7番の間の椎間板から出る神経が圧迫されると、上顎の自動運動の可動域の制限が生じる。
(d)臓器の機能低下が原因で起こる組織や器官、臓器の自動運動の可動域の制限の例としては、肝機能が低下したとき、筋肉や内臓全般が萎縮し、機能低下が起こる。特に眼球は肝機能低下に対し、鋭敏に反応し視力の低下が起こることが多い。
(e)腫瘍などが原因で起こる組織や器官、臓器の自動運動の可動域の制限については説明の必要がないと思われるが、腫瘍を手術で切除した場合も、手術の痕に不可動な部分が生じ、周辺の組織の自動運動の可動域に制限が生じるのが一般的である。

可動域が縮小した原因を取り除き、可動域を元に戻せば、機能も元に戻る。しかし、手術や脳梗塞、心筋梗塞のように、正常な器官の一部が切除されたり、壊死した場合、元に戻すことができないないので、機能の復元に限界がある。

(2)経絡とは?


人体は、正常な状態においては全身に気が流れ、皮膚や筋肉、関節、骨、内臓など全ての組織がモワモワ動いている。このモワモワ動いている状態を、東洋医学では、「気が流れている」、動いていない状態を「気が流れていない」と言う。

怪我や病気で硬結(筋肉や骨、関節などの組織が硬くなったもの)が生じると、硬結の生じた部分の可動性が低下する。このとき、連動して可動性が低下する皮膚や筋肉、内臓、骨などの連続した帯状の流れを経絡と呼ぶ。例えば、手の親指から肺経と呼ばれる経絡出ているので、親指を突き指すると、指に硬結ができ、少商から雲門、中府の間の皮膚や筋肉の可動性が悪化すると共に、肺の可動性が低下し、肺の機能が低下して、肺経の支配下にある喉や鼻、皮膚が弱くなる。

気が分かる人は、触診で、気が止まっている部分や気の流れが悪化している部分が帯状の連続性を持っていることを確認出来る。

この流れを単純化したのが経絡図である。肝経心経脾経肺経腎経胆経小腸経胃経大腸経膀胱経心包経三焦経督脈任脈の14経絡が載っているものが一般的である。

(3)経絡の連鎖と人体の恒常性


[人体の恒常性とは]

人体を構成する細胞は、脳細胞や心筋の細胞のようにのように100年を超えて生き続けるものもあるが、小腸の粘膜細胞や白血球のように数日の寿命しかないものもある。しかし、寿命の短い細胞は次々と再生されるので人体の恒常性が保たれる。

人体全体も、変形、移動、食物の消化吸収、排泄など常に変化しているが、人体の恒常性は保たれる。

怪我や疾病は人体の恒常性を破綻させようとするが、修復されて、恒常性が保たれることが多い。

人体の恒常性を維持するために、自律神経系、免疫系、内分泌系のシステムがあることは知られているが、経絡が人体の恒常性を保つために存在することは理解されていない。


[自律神経失調症と内臓の相対的な機能低下]

自律神経失調症と言われる人を東洋医学の脈診で診断してみると、腎虚や肝虚、心虚などと呼ばれる内臓の機能低下が見られる。腎虚は腎機能の低下を、肝虚は肝機能の低下を、心虚は心機能低下を意味するが、現代医学で言われるような絶対的な機能低下ではなく、五臓六腑と言われる他の内臓の機能に対する相対的な機能低下を意味する。

内臓の機能が正常な状態を10とすると、全ての内臓が7まで低下している場合、多少の体力低下が感じられても、症状は現れない。ところが、東洋医学的な方法で治療し、心臓が7のままで、他の臓器が全て8になると動悸や胸痛がすることがある。

このような他の内臓の機能に対する相対的な機能低下で起こる症状は病院の検査では分からない。首、肩の凝り、耳鳴り、手足の冷えや痺れ、動悸、息切れ、多汗症、目眩、喉や胸の違和感、高血圧、糖尿病など自律神経失調症や成人病などのカテゴリーに入る疾病で、病院で原因が特定できないものは、内臓の相対的な機能低下で起こるものが多い。


[内臓間のバランスを自動修復するシステムとしての経絡]

経絡のシステムは、経絡治療のためにあるのではなく、怪我や病気などで、臓器や器官の機能低下が起きたとき、内臓間のバランスを自動修復するためにある。例えば、足首を捻挫し、肝経に支配される筋肉や内臓の可動性が低下すると、肝経→心経→脾経→肺経→ 腎経の順で、それぞれの経絡に支配される筋肉や内臓の可動性の低下が起き、機能低下が分散され、臓器や器官のバランスが修復される。

体力が十分にあるときは、経絡システムによる分散で、問題は生じない。しかし、繰り返して怪我をしたり、高熱を繰り返したり、高齢になったりすることで臓器の機能低下が限界を超えると、経絡のバランスが崩れ、自律神経失調症を始めとして、現代医学では根本的な解決ができないさまざまな病気が起こる。

崩れた内臓のバランスを正常な状態に戻すには、脈診などの東洋医学的な診断法で、問題経とその原因となる不可動の部分を見つけて治療し、問題経に支配される皮膚や筋肉、内臓、骨などの自動運動が正常に行われるように(気が流れるように)すればよい。

(4)経絡の連鎖


肝経心経脾経肺経腎経胆経小腸経胃経大腸経膀胱経心包経三焦経督脈任脈の14経絡の中で、古典的な東洋医学の理論において、連鎖関係が認められるのは、肝経心経脾経肺経腎経胆経小腸経胃経大腸経膀胱経の10経絡である。

気 が分かったり、脈診ができたりすると、特定の経絡の気の流れを変化させ、他の経絡にどのような変化が生じるかを検証することができる。以下その検証結果。

①気功整体根治療術や鍼灸など、経絡のバランスの診断と治療が可能な治療法で心機能低下が見られる患者を治療するとき、心経に支配される組織や器官、内臓等に問題が見られない場合、肝経に問題があることが多く、肝経上の硬結を緩めると、肝経と心経の気の流れが良くなり、肝機能と心機能が上がる。この現象は、肝経上に硬結が生じ、肝機能が低下すると、連鎖して心機能が低下することを示している。肝機能が下がると、筋肉が萎縮し、胸部や腹部が縮み、心臓の可動域が制限されるため、心機能が低下するのが原因である。

②肝機能低下が見られる患者を治療するとき、肝経に支配される組織や器官、内臓等に問題が見られない場合、腎経に問題があることが多く、腎経上の硬結を緩めると、腎経と肝経の気の流れが良くなり、腎機能と肝機能が上がる。これは、腎経上に硬結が生じ、腎機能が低下すると、連鎖して肝機能が低下することを示している。

腎機能が低下し、腎経が支配する足の筋肉の可動性が低下すると、腎経と隣接して走る肝経に支配される筋肉の可動性が同時に低下するのが原因と思われる。

③腎機能低下が見られる患者を治療するとき、腎経に支配される組織や器官、内臓等に問題が見られない場合、肺経に問題がある場合が多く、肺経上の硬結を緩めると、肺経と腎経の気の流れが良くなり、肺機能と腎機能が上がる。これは、肺経上に硬結が生じ、肺機能が低下すると、連鎖して腎機能が低下することを示している。

肺の機能が上がると胸部の肋骨が柔らかくなって可動性が上がる。腎経は、肋骨を横切るように、胸部の中央の両脇を流れているので、肋骨の気の流れが良くなると、腎経の気の流れが良くなり、腎臓の機能が上がる。

上記のように触診で皮膚や筋肉、骨、内臓の気の流れ(モワモワとした動き)が分かると、経絡の連鎖関係を調べ、経絡の古典理論が正しいかどうか確認することができる。

< 以下触診により調べた連鎖関係>

rensa_zou1.gif④肝心脾肺腎の五臓には、図のように
(a)肝経が虚すると、心経が虚し、心経が虚すると、脾経が虚するのような、肝→心→脾→肺→腎→肝の順で、正の連鎖関係があり、特定の内臓だけに著しい機能低下が起こらないようになっている。

(b)治療においても、肝経の気の流れを改善すると、心経の気の流れが改善し、心経の気の流れを改善すると、脾経の気の流れが気の流れを改善するというような、肝→心→脾→肺→腎→肝の順で、正の連鎖関係がある。

(c)肝経の気の流れを良くすると、腎経の気の流れが悪くなり、腎経の気の流れを良くすると、肺の気の流れが悪くなると言うように、肝→腎→肺→脾→心→肝の順の負の連鎖関係がある。

rensa_fu2.gif⑤胆小胃大膀の五腑においては、
(a)図のように胆→小→胃→大→膀→胆の順で、「→」の左側の経絡が虚すると、右側の経絡が虚すという正の連鎖関係があり、特定の内臓だけに著しい機能低下が起こらないようになっている。

(b)治療においても、胆→小→胃→大→膀→胆の順で、「→」の左側の経絡の気の流れを改善すると、右側の経絡気の流れを改善するという正の連鎖関係がある。

(c)心経、小腸経、大腸経は、同時に気の流れが良くなったり、悪くなったりするので、同一の経絡と考えても、実質的な問題は生じない。そのため、五臓において成り立つ「②(c)」の負の連鎖関係は成り立たない。例えば、小腸経が虚していると、大腸経と心経も同時に虚している。小腸経に気を流すと同時に大腸経と心経に気が流れる。そのとき、一瞬、胆経 の気の流れが悪くなるが、大腸→膀胱→胆経の順で気の流れが良くなるため、胆経の気の流れは、最終的には最初の状態とほとんど変わらない。

(5)経絡の連鎖と潜在的顎関節症


関節や骨が柔らかい幼児期に、高熱などが原因で、肝機能が大きく下がると、胸部が萎縮し、心機能低下による激しい経絡反応が起こる。経絡の連鎖は1回や2回では止まらず、数回~数十回連続して起こる。心臓が左サイドに偏っているため、体の左側を中心に、体が萎縮して、捻れていく。連鎖が6~7回に達すると、肝機能による筋肉の萎縮に伴い、肝臓自体の萎縮による激しい肝機能の低下が起こり、体の右サイドを中心に、体が激しく捻れていく。潜在的顎関節症の人で、顎関節に大きな歪みや関節円板転移が起きている人の多くは、このときに問題が生じたものと思われる。

潜在的顎関節症の人は、幼児期に経絡の連鎖反応が起き、内臓全般が萎縮して機能低下を起こしているので、中学校や高校で、捻挫や骨折などの怪我をすると、そのとき生じた硬結を起点とする経絡の連鎖反応によって引き起こされる内蔵の機能低下で、自律神経失調症や不定愁訴、鬱病など精神性疾患で悩んだり、病院では原因が分からない病気になったりすることが多い。

また、20才を過ぎると体力が徐々に低下し始め、年齢が上がると低下が大きくなり、問題が生じやすくなる。特に、35才を超えると、腎臓の機能が急激に低下するため、更年期障害を初めとする様々な問題が生じるようになる。

女性は、妊娠すると全身が緩むが、このとき緩まない硬結があると、全身が柔らかくなっているので、この硬結を起点として経絡の連鎖反応が起き、体全体が捻れ、体が硬くなる産後半年あたりから自律神経失調症を始めとする様々な問題が生じることが多い。

(6) 多重層の構造を有する潜在的顎関節症


潜在的顎関節症の人の頸椎の3番を治療して下顎が緩み、頸椎の7番を治療して上顎が緩むと、顎関節症の随伴症状が改善することが多いが、その後再び頸椎の3番の気が流れが止まり、症状が再び出ることがある。

このタイプの人は、頸椎の3番と7番を交互に治療することを繰り返すと、治療回数に応じて、体力が上がり、次第に随伴症状も弱くなっていく。

このタイプの人は、関節や骨が柔らかい幼児期に、潜在的顎関節症が多重層に生じてしまっているため、このような反応が起きると推定される。

(7) 心臓防御反応


《身体的な心臓防御反応》
心機能が低下すると、経絡の連鎖で、足の親指から出ている脾経(図1図2)が虚し、脾経に沿って足の親指の爪の付け根にある隠白から公孫までが瞬時に硬くなり、足の親指の可動性が低下するのに連動して、他の足の指も可動性が低下する。このとき、足の指から出ている肝経、胃経、胆経、腎経、膀胱経が虚し、内臓の機能低下が起こる。他の経絡も、経絡の法則で連鎖して虚するので、内臓全般の機能低下が起こり、心臓にかかる負担は軽減される。

《精神的な心臓防御反応》
精神的には、心臓に負担がかからないように、一人でひっそりしているのを好むような傾向が強くなる。例えば、猜疑心が強くなって、他人の言うことが信じられなくなり、人間関係が悪化したり、他人と話をするのがめんどくさくなったりする。

また、普段は気にならないことが気になったり、何か気になると、頭から離れなくなったりする傾向が強くなり、悪化すると仕事や日常生活に問題が生じるようになる。

他方、人間関係が悪化することに対する代償作用として、他人に少しでも非難されるようなことは避けようとする傾向が強くなり、「他人から離れたい」「他人からよく思われたい」と言う相反する欲求を達成しようとするため、精神的、肉体的努力を限界的にすることが多くなる。

他人の何気なく言った言葉が、自分に対する否定的な評価として感じられる場合、現在の努力を超える努力をすることができないため、相手に対する攻撃的な議論をすることで、自己を正当化しようとする傾向が強くなったり、言った相手を許せないと言う気持ちが長期にわたって続いたりすることがある。

病状が進み、気力や体力が限界を超え、攻撃的な議論をする気力もなくなると、「生きているから苦しまなければならない」のように、自己存在を全ての苦しみの原因として考える傾向が強くなり、自殺を考えたり、発作的にリストカットをしたりするように なる。

《精神的な心臓防御過剰反応》
この反応が強くなり、日常生活に問題が生じるようになると、病状に応じて、鬱病、不安神経症、心臓神経症、パニック障害、対人恐怖症、強迫神経症、赤面症、多汗症などと呼ばれる。

また、交感神経が亢進して、感覚が異常に鋭敏になり、普通の人が感じないレベルの痛みを耐えがたい痛みとして感じたり、内耳のわずかな機能低下で、普通の人が感じない、めまい、ふわふわ感、吐き気などを感じたり、人前で緊張すると手が震えたりするようになることがある。

これらの病気は、症状に連続性があるため明確な境界線を引くのが難しいだけでなく、心機能を上げることによって、症状が改善するという共通点がある。

《心臓防御反応と顎関節症》
関節や骨が柔らかい幼児期に、心機能が低下して、経絡の連鎖で脾虚になると、骨や関節が捻れるように歪み、付随する筋肉が、骨の歪みと捻れに伴って、骨に巻き付くように引っ張られて移動する。また、関節や骨が柔らかいため、心→脾→肺→腎→肝→心→脾→肺→腎→肝と言う連鎖が急激に進む。頭部や顎関節も脾虚で繰り返し歪むので、顎関節にある関節円板の転移の多くはこのときに起きるのではないかと思われる。