顎関節症の歴史的背景
渡辺東洋医学研究所
1.Costen's syndrome(コステン症候群)
顎関節症の治療は、Annandale T(1887)、Lanz W(1909)、Summa R(1918)、Prentiss HJ(1918)、Pringel J(1918)、Wright WH(1920)などのレポートに見られるように、19世紀の後半から行われていた。
現代医学における顎関節症の概念は、関連痛を研究していた米国の耳鼻咽喉科医Costen JB. が1934年に、"A Syndrome of Ear and Sinus Symptoms Dependent Upon Disturbed Function of the Temporomandibular Joint."というタイトルで発表したレポートで広く認識されるようになったため、欧米では、つい最近まで、顎関節症は「Costen's syndrome(コステン症候群)」と呼ばれていた。
咬合異常が難聴、耳鳴、めまい、耳周辺の痛み、顎関節周辺の圧痛、頭痛、舌痛、舌咽神経痛、開口障害などの原因となるというCostenの仮説に対しては、Shapiro HH, Truex RC(1943)、 Sicher H(1948)などのレポートに見られるように、Costen's syndrome(コステン症候群) という用語が一般的に使われ始めた頃から否定的な見解が見られ、70年以上にわたって様々な研究と論争、治療が行われてきた
2.TMJ pain dysfunction syndrome
(顎関節疼痛機能障害症候群)
Schwartz LLは、放射線科医と精神科医の協力を得て、顎関節に疼痛がある500名を超える患者の調査を行い、"Pain associated with the temporomandibular joint(1955)"、"A temporomandibular joint pain-dysfunction syndrome(1956)" で、この疾患は、
(1)耳の前の部分に一側性の鈍痛やズキズキする痛みを起こす、(2)15才から40才までの女性に起こりやすい、
(3)咀嚼によって症状が悪化し、開口障害を伴うことがある、
(4)顎関節に炎症やレントゲン検査による異常は見られない、
(5)顎関節音が伴う場合があるが、これは症状がない人にもよく見られる現象である、
(6)咬合異常がこの疾患の原因であるという医学的事実は見つからないことを明らかにし、TMJ pain dysfunction syndrome(顎関節疼痛機能障害症候群)の概念を提唱した。
この理論は、Laskin DMによって引き継がれ、1960年に精神生理学的な考え方を重視したMyofacial Pain Dysfunction Syndrome(筋・筋膜疼痛機能障害症候群)の概念が提唱される。。LaskinはGreene CSと共に、175名の筋・筋膜疼痛機能障害症候群患者を長期間にわたって調査し、"Long-term evaluation of treatment for myofascial pain-dysfunction syndrome(1983)"で、(咬合や顎関節に不可逆的な変化を起こさない)保存的な治療が最善であるという結論を下す。
3.顎関節症の原因は解明されていない
米国国立の口腔顎顔面研究所(NIDCR)が"TMJ disorders(顎関節症)"で米国民に公表しているように、顎関節症の原因は、いまだに解明されていない。
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