平成のカラオケ健康法・四


 

●第四章  「気で治す」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●1.気で治す!●

 行きつけの喫茶店のマスターから「気で体を治す人がいて、ぎっくり腰を治してもらった」という話を聞いた。
私は、「気」のような科学では説明できないものは取りあえず信じない主義だったが、自分が考えることができる方法では直らないことが分かっていたので、物は試しとお金をどぶに捨てるつもりで、北野にある玄徳院という治療所に行ってみた。 初診料無し、1回5千円という料金だった。

 

●2.右足先があつくなる!●

 そこの治療は摩訶不思議で、背中の一点にかすかに手を触れるか触れないように触り、微動だもせず30分から1時間治療する。
そして足のすねをチェックし、変化が現れていればその日の治療は終わりとなる。 治療が終わって駅に向かうと、不思議なことに右足先が熱くなり、2時間ほど続いた。

 

●3.足はますます悪くなる!●

 これは効くかと思い、週2回のペースで一ヶ月ほど通ったが足はますます悪くなった。
足がフガフガして、まっすぐ走れなくなり、電車に乗って30分もすると疲れて、立っていられなくなった。 おまけに歯の噛み合わせまでおかしくなったり、次から次へと変なことが起こった。

 

●4.暴飲暴食しても大丈夫●

 三ヶ月目辺りから足も段々よくなり、胃が弱くて夜遅く食べると胃がもたれたのが、夜遅く暴飲暴食してもなんでもなくなった。またある時は「今日は胃腸を治療したので体重が3kg増えます」といわれ、一週間もしないうちに私の体重は3kg増えた。 同じところを治療した太り気味の友人は逆に「3kgやせる」といわれ一週間で3kgやせた。

 

●5.カラオケの声が響くようになる●

 言われた通り半年ほどして行くと、二代目の玄徳院は親切で今まで治療で疑問に思っていたことも事細かに教えてくれた。 三ヶ月も通うと治療するところもなくなっしまった。そこで先代が治療したところをもう一度治療してもらうことになった。 不思議なことに二周り目に入ると固かった背中も柔らかくなり、猫背気味になっていた背中もピンと延びてきた。カラオケで歌っても、声が響くようになったり、いいことが次から次に起こった。

 

●6.玄徳院の治療法●

 玄徳院の治療においては、まず、胸椎の1番から4番までの曲がり方をチェックする。 男性4通り、女性4通り、併せて8パターンあり、1番から4番までの曲がり方のパターンが腰椎まで繰り返して行く。 仮に1番に問題があった場合、実際の問題は5番にあるのかもしれないし、9番に問題があるのかもしれないし、場合によっては腰椎の1番にあるのかもしれない。 どこに問題が現れるかによって、治療点を判断することになる。 足や腰に問題があれば、腰椎を治療することになる。

 治療はオステオパシーのようにキョク突起(背骨の膨らんでいる部分)を直接治療するのではなく、その横の三束ないしは五束と呼ばれる治療点を指で軽く押さえることによって行う。 治療には30分から1時間かかるが、その間、患者はうつぶせ状態で、微動だも出来ないので、大変疲れる。 風邪などひいていて、鼻水がでているときは、大変なことになる。 治療点にさわっていると、さわっている部分が動き出す。そして膝の下の部分に触ってチェックし、変化がでていれば「入った」ということで、その日の治療は完了となる。

 

●7.治療の深さ●

 治療されている側の感覚では、治療中にふと意識が薄くなったり、短時間眠りに陥ってしまった瞬間に「入った」という状態になるのだが、治療者は、この瞬間がはっきり分からないので膝の下の部分の変化をチェックして、「入った」かどうか判断していた。 私の場合、さらに治療を長くすると、頭の中で「かすかに光る」状態が訪れることが時々あった。 この状態が訪れると、その治療点は「完全に入った状態」になり、二度と治療する必要がなかった。

 ところが、膝に変化が現れて、治療者は「入った」思っても、「頭の中が光る」状態が訪れないと、再度治療が必要になることがあった。

 

●8.真の健康体を求めて●

 胸椎と腰椎の三束と五束をすべて治療し、背面の運動点をすべて治療し終わっても、足の感覚はまだおかしかった。 完全には入らない治療点があったように思われたので、先代の元徳院が治療した点をもう一度治療してもらうことにした。 先代の理論によれば、一度完全に入れば二度と入らないはずであったが、二度目に「光って完全に入る」治療点がかなりあった。 二度目に入ると不思議なことに、背筋が柔らかくなり始めた。 「治療点を、すべて完全に入れれば、体がを改善され、真の健康体になれるだろう」という期待が高まった。

 

●9.眠れなくなる●

 新玄徳院に、毎週2回のペースで通い始めてから、1年ほど経ったころ、突然眠れなくなった。1日3時間前後しか眠れなくなった。「眠れないが、体は休めなければ」と思って、1時くらいになると横になって、寝る格好だけはした。玄徳院で治療を受けると、意識がなくなって短時間眠ってしまうので、自分で背中にさわって、治療を試みた。

 30分ほどすると、突然意識がなくなって眠ることができた。 しかし、3時間以上は眠れなかった。それでも元玄徳院に通い続けた。こういう状態が半年近く続いたが、顔色が若干悪くなる程度で、日常生活には大きな支障はなかった。

 

●10.精神安定剤●

眠れない状態が半年ほど続いたころ、知り合いのお医者さんに「1日3時間ぐらいしか眠れなくって、困っているんです」と相談してみた。すると軽い精神安定剤を出してくれた。1錠飲むと、その晩はぐっすり眠れた。不思議なことに、翌日からは精神安定剤なしに7時間くらいは眠れるようになった。

 

●11.玄徳院卒業●

 このころになると、自分で触っている治療点が、しばらくすると動き出して柔らかくなるようになっていた。ある時、新玄徳院に、「自分で自分の体を治療できるようになっています。先生も体に問題があるようですから、治療しましょうか」とお伺いしてみた。「自分で自分を治療できるというのは、すごいですね。私もできないし、先代もできません。」という答えが返ってきた。

 ちょっと間があってから「渡辺さん、実は私はこの治療法は怖いんですよ。確かに鍼灸や整体などのほかの治療法と違って、一度治療すれば元には戻らないし、筋萎縮症のようなものでもよくなって行きます。だけど治療した後何が起こるかわからないんです」と言う。「僕の場合も歯のかみ合わせがくるったり、半年眠れなくなったりしましたが」と言うと、「ええ、よくなる人は本当によくなるんですが、一度治療して二度と来ない人が結構いるんです。この人達に何が起こっているのか分かりません。自分では怖くてこの治療が受けられないんですよ。」

「ああ、そうだったんだ」と思った。この日が玄徳院で治療を受ける最後の日になった。

 

 

 

 

  第一章へ   第二章へ   第三章へ   第四章へ  

第五章へ   第六章へ   第七章へ   第八章へ   目次へ