1. 疲れて仕事をする気力がなくなる 2. 無知 3. 走る 4. 針は即効性があるが3日もすると元通り 5. 指圧をすると1ヶ月持つ 6. 仮説 7. 劇的な効果 8. 毎晩飲み歩いても大丈夫 9. なぜ壁に向かっての腕立て伏せが劇的な効果を上げたのか 10. ピアニストの腱鞘炎が治る
●1.疲れて仕事をする気力がなくなる●
英会話という仕事には、特に体力を必要とするようなことはなにもないのだが、20代も後半になると、体が疲れて仕事をする気力がだんだんなくなってきた。特に夜遅くなると、体がぐったりと疲れ、人と話をするのもつらくなった。食欲もなかった。酒など飲むと二、三日はうどんかそばしか食べられなかった。
原因は分からなかったが、なぜか医者に行って診てもらおうという気にはならなかった。
●2.無知●
本人はあまり気にしていなかったけれど、私は子供の頃から「やせている」とよく言われていた。両親も太っている方ではなかったけれど、私の場合、身長170cmに対して、体重54kgと極端にやせていた。自分が歩くのを見たことがないので、想像でしかないのだが、他人が私の歩くのを見ると、何となく安定感がない歩き方をするようで、家内から一度「こういう風に歩けないの」と実技指導を受けたことがある。しかし、2歳の時肺炎で死にかけたのと、アレルギー体質であるということを除けば、特に病弱ということはなかった。
私はつい最近まで、カラオケで大きな声がでないこと、極端にやせていること、歩き方が不安定なこと、胃が弱いこと、2歳の時肺炎をやったことが、すべて一つの線でつながっているのに気がつかなかった。
●3.走る●
大学時代には、週に一、二回、山の中を走っていたこともあって、とりあえず毎日30分ほど走ることにした。二、三日もすると、食欲も多少でてきて、すべてうまく行くように思われた。最初の二ヶ月は、体も軽くなり、食欲もでてきた。ところが三ヶ月目に入った頃、お酒を少し飲んだ翌日、食欲が全くなくなり、走っても疲れがたまるだけ、症状は日毎に悪化していった。胃の薬も効かなかった。うどんそばを食べても、胃の中にたまったままだった。体力が極端に低下して、仕事に差し支えるようになっても、不思議なことに医者に行くことは思いつかなかった。
母が心臓がおかしいと医者に行き、心臓の薬を飲んでいるうちに、胃がおかしくなり、さらに心臓と胃の薬を飲み続けるうちに、肝臓が悪くなり、ついに10種類を越える薬を飲むようになり、しばらくすると体ががたがたになったのを間近で見たせいかもしれない。その母も薬をやめ、一年もすると元の健康体に戻った。
●4.針は即効性があるが3日もすると元通り●
針は一度もやったことがなかったので、非常に抵抗があった。痛いだろうということもあったが、針が突き刺さって、体の中に入ってくるということに恐怖感を覚えた。しかし他に名案も浮かばなかったので、電話帳で近くの鍼灸院を探し、出かけてみた。針は即効性があり、一時間もするとおなかが空き始め、食欲がでてきた。
しかし三日もすると、また食欲がなくなった。三、四回は通ったと思うが、「こんなことを繰り返していてもしょうがない」と思って、今度は指圧師のところに行ってみた。
●5.指圧をすると1ヶ月持つ●
この指圧師は、有名な指圧の先生の内弟子だった方で、この後いろいろな人に指圧をしてもらったが、この人よりうまい人にはいなかったように思う。この先生に二度ほど指圧をしてもらうと、おなかの調子はかなりよくなり、一ヶ月は大丈夫だった。ただ脂っこいものやお酒を飲むと胃の調子が悪くなった。
●6.仮説●
この先生のところに、月二回ぐらいのペースで半年ぐらい通った。そして気がついたのは、「筋肉、特に足の筋肉がゆるむと胃の調子がよくなる」ということであった。また、このことから、なぜ体調がここまで悪くなってしまったのか推察された。つまり「私が走る前に足の筋肉はかなり堅くなっていて、そのために胃の調子が悪かった。私が走ると、乳酸など筋肉にたまっていた老廃物が一時的になくなり、体が軽くなったように感じた。しかし走ることによって筋肉を痛めるので、筋肉はさらに硬くなり、老廃物もさらに溜まり、胃は悪化した。
そこで私は一ヶ月ほど、重たいものは絶対に持たないように、また歩くのも最低必要限にして、できる限り筋肉に負担をかけないようにして暮らしてみた。足は若干細くなったような気がしたが、筋肉の状態はよくならなかった。
そこで思いついた仮説は「運動は筋肉を痛めるので、基本的に体に悪い。しかし骨を折ったとき、回復すると太くなってさらに強くなるように、筋肉も回復過程が大切なのだが、筋肉が硬くなった状態で普通の運動をすると痛めるだけで回復しない。だから弱くなった筋肉でも回復可能な、最低必要限の運動をすれば、筋肉は徐々によくなる」というものであった。
●7.劇的な効果●
手の筋肉をゆるめるために、体重をかけないように壁に向かって腕立て伏せをできる限りゆっくりしてみた。無理な力が掛からないようにチェックするため、目をつぶってやった。運動はアイソメトリックのようなものより、酸素負荷を要求するインターバルトレーニング的なものの方が、効果が高いし、また、筋肉に溜まった老廃物を取るのにも役立つと思われるので、ある程度の回数が必要だが、回数が多すぎると筋肉に負担がかかりすぎるという危惧を感じた。そこで試しに一日10回やってみることにした。足の筋肉に対しても同様に、スクワットを10回することにした。
一週間もすると腕の筋肉は劇的に柔らかくなり、肩こりもなくなった。不思議なことに夜遅くなっても、全く疲れなくなった。しかし足の方はほとんど変わらず、胃の状態も悪くはないが、消化の悪いものは食べられない状態だった。
●8.毎晩飲み歩いても大丈夫●
「スクワットは負担がかかりすぎるのだろう」と思ったので、2kgの重りを買ってきて、上向きに寝た状態で、重りを足で押し上げる運動を続けた。また重いものを運んだり、階段を上ったりするのを極力避けるようにした。
一ヶ月ほどすると足の筋肉は見違えるほど柔らかくなり、天ぷらを食べても何の問題も起こらなかった。つい最近まで、お酒を飲むと二、三日は食欲が減退する状態だったので、恐る恐る近くのパブで、水割りを2杯ほど飲んでみた。翌日は気分壮快、何の問題も起こらなかった。
これに気をよくして毎晩十二時過ぎまで、飲み歩いたが一ヶ月たっても何の問題も起こらなかった。この調整法も劇的な効果があったが、一ヶ月もかかるうえ、日常の行動も制限されるので二度と行うことはなかった。その代わりに、私の英会話スクールから2kmのところにアパートを借りて、毎日歩くことにした。
半年もすると本当の健康体になり、テニス、スキー、ゴルフと色々なスポーツを楽しむことができた。
●9.なぜ壁に向かっての腕立て伏せが劇的な効果を上げたのか●
当時、私は人間の体について、中学校や高校で教える簡単な生物学的知識しか知らなかったので、スクワットと腕立て伏せの違いは、体重が掛かるか掛からないかだけの違い、言い換えれば、@腕立て伏せでは筋肉に必要最小限の力をかけることができたのにAスクワットでは体重がかかりすぎて、筋肉が回復できないダメージを与えてしまっただけの違いだと思っていた。
後にオステオパシーを勉強してから、もっと本質的な問題が隠されていたことに気がついた。私の右腕は反時計回りに左腕は時計回りにねじれているので、両腕をハの字の形について腕立て伏せをすると、その問題が若干矯正されるのだ。この若干の矯正がオステオパシーの治療においても相当の効果をもたらす。どちらの向きに壊れているか見つけるのは、手首をちょっと触っただけで分かるのだが、不思議なことに、素人の方が見つけるのは非常に困難なようだ。
一般的に言うと、私のような痩せたタイプの人は、私と同じ向きにねじれていることが多く、太っている人は反対向きのことが多い。だから痩せている人はハの字がつぶれたように手をつき、太った人は両手を平行に近くつくと効果が上がる確率が高い。ただ人によっては逆の場合もあるので、自然に手をついて、最も楽な角度が一番安全であり、かなりの効果も期待できる。
第二に、腕の筋肉が肩を介して頸椎及び頭蓋骨と繋がっているため、腕の筋肉をゆるめることによって、頸椎、頭蓋骨の可動性がよくなり、その結果全身の筋肉が緩むという相乗効果をもたらすことだ。熟練したマッサージ師が頸椎の周りからもみほぐし始めるのはこのためだ。
●10.ピアニストの腱鞘炎が治る●
その頃毎晩通ったパブの、ピアニストは長崎生まれの美人だったが、腱鞘炎で針治療に通っていた。「治療したときは楽になるのだけれど、三日もすると元に戻ってしまう。それで週二回通っている。痛みがひどい日は、お酒を飲んで、痛みをごまかしながら、ピアノを弾いている」という話だった。そこで、開発したての壁に向かってする腕立て伏せについて、苦労話を交えながら説明した。
一週間ほどしてから、効果を聞くと、「痛みが取れない」という返事が返ってきた。そこで「腕立て伏せをしているときに、体重をかけて速いスピードでやっているんじゃあないですか」と聞くと、その通りですと言う。そこでもう一度原理を説明し「体重をかけないで、ゆっくりやるように」指導した。
五日ほどたってから効果を聞くと、「あれほど苦辛だ腱鞘炎が嘘のように治り、痛みが全くなくなった」とのことだった。