平成のカラオケ健康法・十


 

●第十章  「脈診」

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2.脈診の本を買う
3.脈診入門 六部定位脈診法 山下先生著
4.壁にぶつかる
5.病経と証
6.病経の決定と指診法
7.脈状が分からない
8.古典で説明される脈状は正しいのか?
9.現代医学との違い
10.結論
11.治療技術の問題
12.赤外線レーザーの謎
13.病脈と怪我
14.絶対脈診法と気
15.虚実
16.経絡と整体
17.腰痛の論理
18.五十肩の論理
19.心臓
20.心臓とうつ病
21.心臓と難病

 

 

 

●1過呼吸症.●

英会話の事務のバイトをしていた20代半ばの女性が過呼吸症で、患者さんの中に「神様」と言う人がいるという女性の鍼灸師の治療を受けていた。 あるとき、バイトに現れたと思ったら「帰る」と言う。「えっ、どうしたの。」と聞くと「鍼の治療をしてもらって来たんだけど、手が上がらなくなってしまった」と言う。急に帰られても困るので、「ちょっと見せてごらん」と言って、診てみると、腕がロックしてしてしまっている。腕のロックをはずし、首を調整すると5分もしないうちに治ってしまった。 今まで、私が治療の話をしても、ぜんぜん信じなかったのが、腕が動くようになっただけで、突然態度が変わり「過呼吸症を治してくれと」言い出した。「過呼吸症は治療したことがない」と断って、治療を開始した。 問題は明らかだった。後頭部の1、2番のあたりの気が流れていない。「ここの気が流れていないのだけど、何かしてない」と聞くと、「小さいころお風呂場でころび、後頭部を打って、縫っている」と言う。 後頭部以外では、足に若干問題があるだけだった。その足を治療すると不思議なことが起こった。筋肉がグズグズ崩れるように変化し、治療したところが膨らんでくる。足の指一本一本が、グズグズ崩れるように変化し、膨らんできた。胸部や腹部も同様だった。全身が同じように変化した。2ヶ月もすると、身長が2cmほど伸びた。実に不思議な体だった。 問題が起こった。私が治療すると家に帰ってから、過呼吸症が出てしまう。最大の問題点である後頭部を治療しただけで、治療中に発作が起こったこともあった。とりあえず、発作は治めて返すのだが、家に帰るとまた発作が起こってしまう。 ところが、女性の鍼灸師が治療すると発作が収まるという。聞いてみると、その鍼灸師は、まず脈を診る、そして「脈診は絶対だ」と言っているという。

 

●2.脈診の本を買う●

早速、脈診の本を数冊買ってきて、読んでみた。脈診の本は、慣れないと読みにくい。耳慣れない言葉が次から次へと出てくるからだ。 どの本にも共通しているのは、手首の寸口と呼ばれる橈骨動脈の拍動部を、寸、関、尺の三部に分けて診ること、両手にあるので、左右で六脈診ると言うことだった。それぞれの脈と内臓との関係は、流派によって多少の解釈の違いがあるが、左寸で心と小腸、右寸で肺と大腸、左関で肝と胆、右関で脾と胃、左尺で腎と膀胱、右尺で心包と三焦を診る六部定位脈診法というのが最も広く受け入れられていると言うのが分かった。 数学や物理の本と違って、同じ脈診の本なのに書いてあることが違う。「どの本が正しいのか、どうしたら確かめれるのか」という問題に突き当たった。

 

3.脈診入門 六部定位脈診法 山下先生著●

@脈診による治療は、(1)脈状を診る(2)証を決定する(3)証にしたがって治療するという順番になるので、この三つの事項について、詳述してある本でなければ、実践の役に立つとは言えない。ところが、脈診の本の多くは、証についてのみ書いてあるものだったり、古典の解釈をくどくど書いたものだったりして、脈診を学ぶという観点からすると、役に立つものは、ほとんどなかった。 しかし、山下先生著の脈診入門 六部定位脈診法は、この三つの事項について詳述してあり、「実際に脈診ができ、実践に基づいて書いた」ことを感じさせるものだった。 A脈診理論の再構築 この本の特徴は、古典を盲信することなく、鍼灸医学を成立する原理を分析し、あいまいな点を極力排除し、明確な脈診理論を再構築しようとしているところにあった。 B脈状 「脈診を難解なものにしているのは脈状が多く、その解説が難解であるためだが、脈状の基本である祖脈、浮・沈・虚・実・遅・数(さく)の六脈を学べば、すべての脈状はその組み合わせとして理解できるようになる」というのが、山下先生の脈状に対する基本的な考えだ。 確かに、浮・沈・虚・実・遅・数の六脈に絞れば、脈状は分かりやすくなる。特に遅・数は1分間に何回打つか数えればいいので、客観的な指標になる。浮・沈・虚・実も極端なものは初心者でも分かる。 C脈状の基本形陰陽虚実 証は、浮・沈・虚・実の組み合わせで決まる。浮脈は陽脈であり、沈脈は陰脈である。この四つの脈の組み合わせで、陽虚証、陽実証、陰虚証、陰実証で基本の4証となる。 D比較脈診による証の決定 六部の浮陽部の脈と沈陰部の脈を比較し、証を決定する。 F難経69難に基づいて治療点を決定する。 69難には「六十九ノ難ニ曰ク、虚スル者ハ之ヲ補イ、実スル者ハ之ヲ・・・」と経絡の虚実と母子関係に基づいて、どのように証を決め、治療すべきか書かれている。

 

●4.壁にぶつかる●

脈診で最初に突き当たった問題は、脈が感じられない場合が、かなりあることだった。患者の手のひらを下に向けると分かる場合が多かった。極端な浮脈の場合、力がちょっとでも入っていると、脈が分からなかった。こういう初歩的な問題を乗り越えて、突き当たったのが「比較脈診による証の決定」だった。説明でどうしても理解できない部分があった。版を重ねている本なので書き間違いとも思えなかった。

●5.病気と証●

「証は、その証の中核となる病経が、他の経絡との因果関で、引き起こすものである」というのが高橋先生の基本的な考えだった。そのため証を脈診によって決定するのは、最終目標ではなく、そこから更にその証を引き起こす病経を見つけだし、直接治療することが、治療の根本であり、「病経を見つけ治療すれば、他の経絡の問題は、同時に無くなる」というのが、本治法といわれる治療法で、高橋先生の脈診治療の中核的思想となっていた。この考え方は、「硬結が原因となって、体が捻れ、内臓の機能の低下が起こる」という気功整体根治療術の理論を作る土台となった。

●6.病経の決定と指診法●

右寸に問題が生じているとき、肺経か大腸経かで迷ったときがあった。私はふと思い立って、肺経の出ている親指と大腸経の出ている人差し指に触ってみたら、親指の気が止まっていた。肺経が虚していたのである。小指のように外側から小腸経、内側から心経がでている場合、小指の内外ではっきり気の流れが違うのが分かった。

<経絡と指>
手の親指=肺経、人差し指=大腸経、中指=心包経、薬指=三焦経、小指内側=心経、小指外側=小腸経、足第1指外側=脾経、足第2指内側=肝経、第2指=胃経、第4指=胆経、第5指内側=腎経、第5指外側=膀胱経

ここで、最終目標の病経を直接見つけることができるようになったのである。

 

●7.脈状が分からない●

次は脈状の問題であった。浮・沈、虚・実、遅・数などの祖脈は、自分なりに、感じをつかむことはできるが、主観的な感覚なので、実際自分の感覚が正しいかどうか客観的にチェックする方法が無いし、指の当て方によっても脈が変わってきた。自分の脈でも不確かなのに、他人の脈となると千差万別で、七表八裏九動の基本的な脈状でさえ、自身を持って判断することができない。「有名な先生の内弟子にでもならなければ、脈診はマスターできないのではないか」と思われた。

●8.古典で説明される脈状は正しいのか?●

「指の感覚で正しく、脈状が捕らえられるようになったとき、どのようにしたら脈診の本に書いてある脈状の解釈が正しいことを確認できるのだろうか」という素朴な疑問に突き当たった。大家と呼ばれる人でも、最初は古典を理解しようとし、自分なりの理解に基づいて、治療をし、予想した治療結果が得られたかどうかで、自分の理解の仕方が正しいかどうか確かめるしか方法はなかったはずだ。予想通りの結果が得られなかった場合、自分の解釈の仕方が間違っていたか、古典が間違っていたかどちらかだ。古典が間違っていることを指摘するには、古典と対応するような治療理論を自分の経験に基づいて、確立していることが必要だ。自分自身の治療理論を、経験に基づいて確立できない限り、盲目的に古典を信仰するしかなくなる。脈診について書いてある本の中には、盲目的な古典に対する信仰心を基に、書かれているものが少なくない。そのため、自分自身の言葉で平易に脈診を説明できず、陰陽論のような非本質的な部分を引きずってしまう。古典の正しい部分を吸収し、間違っている部分を捨てさることができた人は、古典を参考のためのシステムと考え、自分の感覚と判断に基づいて治療し、試行錯誤を繰り返して、その人なり治療システムを確立できた人だ。ここまで到達して、初めて、古典に書かれている脈状の解釈が正しいかどうか判断できる。

●9.現代医学との違い●

現代医学は、診断法や治療法が、科学的であることが特徴で、どの医師でも、客観的な医学的知識に基づき、同じ診断治療をすることができる。脈診法は、そのやり方が書いてある古典に対しても、解釈の仕方がまちまちで、自分の解釈が正しいかどうかは、個人的な治療結果に基づいて判断するしかないない。診断治療は、主観的な部分に大きく左右され、科学的客観性がないのが特徴だ。そのため、西洋医学は着実に技術が高まって行くが、東洋医学は、優れた診断治療技術が生まれても、その人一代で終わってしまう。親子でさえ、感覚が違うので、治療技術を全て伝えるのは難しい。東洋医学は、抽象的な治療理論はある程度共有し合えても、具体的な臨床レベルになると、個人技の世界になってしまう。治療理論は、客観的な判断が難しいため、理論家によるもっともらしい作文がまかり通る可能性がある。一見すばらしい治療理論も、治療経験に裏打ちされないものであれば、単なる言葉の遊びでしかない。

●10.結論●

@脈診は古典を盲信せず、治療を通して、自分の脈診法を作り上げることが必要である。
まず自己治療を経絡の理論に基づいて行い、経絡の気の変化を診ることで、基礎理論の信頼性をチェックする。
次に手技治療と併用して、確率した基礎理論を実際に応用し、応用技術を確立する。
A「脈状が正しいかどうか」などのように、数百人から数千人を診なければ、結論が出ないようなことは、排除する。
B脈は単診で、最も強く打っている経絡と最も弱く打っている経絡を見つけることで行う。
C手足の指の気と臓器の気を診て、病脈を最終決定する。
D病脈が決まったら、経穴図に沿って、病脈全体の気の流れを調べ、どの点を治療するか決定する。
E治療点は気が止まっている点とし、ツボにはこだわらない。
F経絡は市販されている経穴図を参考にする。
以上のような結論に基づいて治療を開始することにした。

●11.治療技術の問題●

自己治療を始めると、手技治療では技術的限界があることが分かった。例えば、小指の内側には、心経が流れ、外側には小腸経が流れているが、手技治療の技術では、関節を単位に治療は出来るが、それより細かい治療は、難しい。
「爪楊枝を使って治療ができる」という話しを聞いたので、試してみると、確かに気の流れが変化する。しかし痛いのが欠点だった。
暖めれば硬結は柔らかくなるんじゃないかと思って、千年灸を使ってみた。千年灸は、使いやすかったので、半年ほど使った。問題は、夏場などに、火傷が起こることと、硬結が大きくて硬いと変化しないことだった。
鍼は生理的に嫌いだったが、千年灸では、どうやっても緩まない硬結が体に散在していたので、灸頭鍼を使うと、今まで緩めることができなかった硬結を緩めることができた。しかし指先やくるぶしなど痛くて使えないところがあった。また灸頭鍼でも緩まない硬結が体に散在していた。
最初は、ハロゲンランプからでる光をレンズで集光して使う機械が、パワーの調整ができ、自然光に近いので、いいかと思われた。しかしパワーを上げると、熱いという欠点があった。そのため、緩めることができない硬結があった。
最後に行きついたのが、赤外線レーザーだった。赤外線レーザーは、安全性も確認されていた。体内に入って、水分に吸収され、熱に変わってしまうが、出力を上げても、かすかに暖かい程度なので、硬結を緩めるには最強のツールだった。問題があるとすれば、灸や鍼と違って患者が治療をされていることを感じないので、本当に効果がある治療をしないと、患者が納得しないことだ。

 

●12.赤外線レーザーの謎●

赤外線レーザーは、体内の水分に吸収されて、光が熱になる。熱になるといっても、敏感な人がかすかに暖かく感じる程度で、お灸の熱には、はるかに及ばない。この程度の熱で、硬結が溶けるなら、お風呂に入っただけで、表面にある硬結はみな溶けることになる。
硬結を変化させるのは、光しか考えられない。メカニズムは分からないが、植物が光に向かって成長していくように、光に対して生化学的な反応が起こり、細胞が活性化するのだろう。
光に対して反応しているのは、赤色レーザーと赤外線レーザーを比較してみるとはっきりする。可視光線である赤色レーザーに対する反応の方が、赤外線より数倍大きい。

 

●13.病脈と怪我●

60代の喘息の患者を診ていたとき、肺経の出ている右手の親指を治療すると発作が止まった。聞いてみると、15年ほど前、ボーリングをしていたとき、ボールが指から離れず、骨折したと言う。 私も左手の手首に気が流れていなかったので、記憶にない2,3才の頃、手首を骨折しているのではないかと思い、母に聞いてみた。「手首を骨折したなどということは絶対ない」と言う。「何もしないで、左手首だけ気が流れないと言うことは考えられない。絶対何かしているはずだ。」と言うと、「そう言えば、お父さんが手首を持って、振り回しながら、あやしているとき、手首が抜けて、小野さんのところに連れていって、はめてもらったことがあった。あの頃は、お父さんも軍隊から帰ったところで、乱暴だったから・・・」 他の患者も同じように、怪我が原因じゃあないかと思って、聞いてみると、怪我をしているケースが多く、そこを治療すると、どんどん良くなった。「怪我をしたことがない」と言う人でも、硬結ができている場所をさして、「ここはどうしたんですか」と聞くと、「そう言えば、昔転んだとき・・・」のように、昔した怪我を思い出す場合が少なくなかった。 治療する患者の数が増えるにしたがって「病脈は、過去にした捻挫や骨折、つき指、打撲、火傷、切り傷、手術などの外傷が原因で起こる。外傷によってできた硬結を溶かせば、病気を根治させることが可能だ。」という気功整体根治療術の基本的な考え方がゆるぎない確信となっていった。

 

●14.絶対脈診法と気●

脈診を始めて半年ほど経った頃、脈を診る変わりに、気を診ると、病脈が瞬時に分かることに気がついた。手首の寸口と呼ばれる橈骨動脈の拍動部を寸、関、尺の3ヶ所に分けて、左右で六か所の気を診ると、体に問題がある人は、必ず一脈だけ気が止まっているのに気がついた。絶対脈診法が完成した瞬間だ。普通の脈診と違い、気を診るので、触った瞬間に、病脈がわかる。

 

●15.虚実●

気功整体根治療術では、「虚する」という表現をよく使う。この「虚する」というのは、鍼灸や漢方で使われる「虚実」の概念とは一致しない。 鍼灸や漢方においては、正気が虚弱になったのを虚証と言い、邪気が強くなったものを実証と言う。脈診で「虚実」というときは、脈の強弱を意味している。 気功整体根治療術の絶対脈診法では、手首の脈を診たとき、気が止まっている脈の状態を、「虚している」と表現する。脈が虚している場合、二つのケースがある。臓器の気が止まっている場合と、それ以外のところお気が止まっている場合だ。例えば、胃経の脈が止まっている場合、胃の部分を腹診し、胃の動きが止まっている場合と、胃は動いている場合がある。後者の場合の多くは、胃経の流れる足に問題が生じているので、足を治せば、胃経は流れる。胃が動いていない場合は、胃兪を治療すれば、胃経は流れる。

 

●16.経絡と整体●

気功整体根治療術では、体のゆがみの原因となる硬結を溶かすので、治療をすると体型が変化する。生理痛で悩む25歳の女性を治療したとき、交通事故で骨折した小指と肘を治療すると、その場でウエストラインが5cm上がったことがあった。 治療を重ねるにしたがって、「指関節が縮んで硬くなっているときは、頭蓋骨がちぢんでいる」とか「胃の部分の上にある肋骨が縮んで硬くなっているときは、手の小腸経に問題がある」とか「胸の中心線に近いところが、押すと帯状に硬くなっていて、痛い」ときは、足の脾経に問題がある」など、体の萎縮と経絡の関係がわかってきた。体のゆがみと経絡の乱れは、同一の問題だったのだ。 整体で骨盤の調整をするとすぐ元に戻ってしまうことが多い。硬結を溶かすことによって、骨盤を調整すると、ゆがみは調整するごとに、良くなって行く。フラメンコに夢中になっている女性が骨盤調整をして欲しいと言う。鍼や整体にいくと、2、3日はうまく踊れるのだが、すぐ元に戻ってしまうと言う。この女性は、体に何の問題もなかったが、治療するごとに、ダンスがうまくなって、先生にほめられるので、1年半ほど治療を続けた。治療するごとに、体のゆがみが良くなって行ったのだ。 胃が痛いとき、みぞおちに近い肋骨が硬くなっていれば、手の小腸経を治療しなければならないこと、硬くなっていなければ、胃経上に問題があることなど、触診による診断のノウハウが蓄積してきた。このノウハウが蓄積してくるに連れ、体の触診による診断が、脈診による診断を次第に凌駕するようになって来た。

 

 

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