平野屋


[陰転したままの牛肉] 梅雨が明け、暑い夏が来たのに「山本の牛肉」も「京王プラザのステーキ」も陰転したままである。スーパーやデパートの肉売り場に出かけても、陽の肉は皆無に近い。たまにあっても、翌日は陰転してしまっている。

[今井浜東急リゾート]毎年夏になると、子供を連れて伊豆に海水浴に行く。今井浜東急リゾートは、陰陽に通じている人が設計したようで、建物全体に陽の気が流れているだけでなく、露天風呂も陽、庭続きのプライベートビーチも陽の砂浜が広がっている。陰陽の分かる人が、リゾートホテルに泊まって海水浴を楽しもうとすると、ここ以外は考えられないと言っても過言ではない。

ところが、ここのレストランは最悪としか言いようのない料理をだす。フレンチレストランの「Shangri・La」や日本料理の「あづま」には、子供が食べられるものが見つからない。まともなのは「舞小浜」というステーキハウスだけである。

今年は「京王プラザのステーキ」でさえ陰転したままなので、心配になって、今井浜東急リゾートのホームページをチェックすると「舞小浜(ステーキハウス)」の紹介ページに載っていた牛肉が陰になっていた。

今井浜に陽の食事を出すところがないかgoogleで画像を検索すると、陽の海鮮丼を出す「どんぶりや」が見つかった。今井浜から下田までは車で30分。下田には行きつけのいし塚や平野屋があるので食事は何とかなると思い、今年も今井浜東急リゾートに予約をした。

[いし塚の蕎麦]伊豆に行くと必ず寄るのが「いし塚」である。「ここの蕎麦が食べたいために、東京から伊豆に引っ越した人がいる」という話を聞いたことがある。ここの蕎麦には陽の牛肉に近いパワーがある。食欲がない人が一口蕎麦を食べると、とたんにお腹が空いてくる。車酔いなどで食欲がなくても、食べているうちに体調が改善してくる。ここの蕎麦が食べたいために、東京から伊豆に引っ越した人がいても不思議はない。顔見知りになった、ここの女将に「ステーキが食べたいのだが」と言って教えてもらったのが「平野屋」だった。

[平野屋]「江戸時代旅館だったものを洋食のレストランにした」という話を女将(ママ)から聞いたことがあるが、中にはいると「時間がゆったりと流れている」不思議な感覚を覚える。店内には、薩摩切子の鉢や初代柿右衛門の小鉢などが無造作に展示されている。

ここに初めて行ったのは、パワーストーンを使った操気系治療術で治療している頃だった。その時展示されているものをしきりと褒めたためか、女将が「骨董品が好きなんですね。ここに展示してない小物があるのですが、よろしければ、一つ差し上げましょう。」と言われ、3〜4点見せてもらった。その内の一つがお香を入れる小さな蓋付きの焼き物だった。「これが気に入りました。」と言うと、「やはり、それですか。」と女将はいかにも惜しそうな顔をしたが、いい気が出ていたので遠慮なく頂戴してしまった。

どうしても緩まない硬結が、この焼き物に適切な石を入れて当てると緩むので、長い間治療に使うことになった。しかし、四面にソロモン系のパワーグッズを彫り込んだ初期のピラミッドが完成すると、蓋が役目を終えたかのように、治療中にに崩れてしまった。

[平野屋のステーキ]挨拶もそこそこに「東急リゾートのステーキが凍ってしまっていて・・・」と切り出すと、「うちでもステーキは苦労しています。お肉が凍ると水分が膨張して、細胞が壊れるみたいで・・・」と陰陽に通じているだけあって、女将は問題を完全に把握していた。「凍った肉は突き返してしまうので、ステーキがない日もあるんですよ。」とのことだった。

「初めて平野屋に行った時から、「ステーキは塩胡椒の味付けで、ミディアム・レアー、メンテルド・バターがあったら付けてください。」とお願いしている。この日は、「ここまでステーキが分かっているのだから・・・」と思い、「和牛ステーキコース」を初めて注文してみた。

ステーキは醤油をベースにした濃い味付けで、ご飯のおかずとして食べると、ちょうど良いようになっていた。僕と健太郎は問題なく食べられたが、華日(ハルカ)は味が濃すぎて、口に合わないようだった。しかし、陽の牛肉を食べる体が緩むので、気合いで飲み込んでいた。

食事が終わると、「ステーキはどうでしたか。」と女将が挨拶に来た。「おいしかったですよ。僕と健太郎は問題がなかったのですが、華日は味が濃すぎたようで・・・」と言うと、「ご飯のおかずになるようになっているので・・・」と言う答えが返ってきた。

「明日の晩も来ますので、よろしくお願いします。僕はステーキにしますが、華日は・・・」と言うと、「明日もステーキにするのですか」と女将は遮った。このとき、「なぜステーキに醤油をベースにした濃いソースで味付けをするのか」分かったような気がした。

[ステーキの油]翌日、僕だけステーキを頼むことになった。すると、女将はステーキの味付けをさらに濃くしてきた。

平野屋は下田で屈指の資産家であるとともに、女将は実業家としても知られている。洋食レストランは、仕事でやっているというより、趣味でやっていて、応接間代わりに使っているようである。どう考えても収益を考えていないと思われない。だから「陰のステーキを出さないこと」は最初から分かっていた。料理は自分が食べたいように作るのである。

「二度目のステーキの味付けをさらに濃くした」のは、国産の最高級のステーキを長期間食べたためと思われる。国産の牛肉は、どんなに高級な牛肉でも脂がだめなのである。そのため長期間にわたって毎日食べると、突然ムカムカしてステーキが食べられなくなる。脂気がないヒレでも同じだ。このムカムカするのを抑えるため醤油をベースにした濃いソースでステーキの味付けをするようになったのだろう。

帰ろうとしたら、女将が挨拶に来たので、「ステーキは油が命です。国産の牛肉は高級品でも油が悪いので・・・」と話すと、「油の量が多いと・・・」と言う。「いや、油の量は関係ありません。油が良ければ量が多くてもおいしいです。国産の牛肉は名が知られた高級品でも、輸入した穀物に抗生物質を混ぜて与えるので、油がだめになってしまいます。放牧して健康な牛を育て、抗生物質の入っていない穀物で仕上げた牛は、毎日食べても飽きません。パワーも強く、内臓がガバッと緩みます。」と説明した。

「ステーキが悪いのではなく、油が悪いこと」が初めて分かったようで、「さすがによく研究していますね。」と女将は言った。



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