5.女性と気(女性原理)


操気整体術は、最初は女性にしか使えなかった。女性の中にも、この治療法を受け付けない人が若干いた。このタイプの人は、「触っていい」ところがないのである。触診して、体の状態がどうなっているか確かめることができないので、治療が難しい。操気療術だけで治療するしかない。聞いてみると、「男性にちょっと触られただけで、鳥肌が立つ」などの症状があり、満員電車に乗れない人さえいた。

一般的には、最初の治療は肩とか肘みたいな差し障りのない部分にかすかに触るか、触らないかで始まり、体が気で緩むにしたがって、許される範囲が広がり、必要な治療ができるようになる。

治療師の手は、患者の気と潜在意識、意識に反応して、自動的に行われるようだ。患者は、意識では、どこをどう治療しなければならないか、分かっていないに場合でも、治療師と患者の気が同期するので、治療する側の無意識の層で、どこをどのように治療すればいいのか、分かるようで、頭を空にすると、手は自動的に動いて、治療が行われる。

この意識下でコントロールされる治療に対して、女性は、ほとんど全て受け入れるタイプから接触をほとんど許さないタイプまで、多様な反応を見せる。同じ女性でも、その日、そのときによって、反応が変化する。特に鬱病や神経症、パニック症候群、過敏性腸症候群など、脳の機能低下が関連していると思われる病気にかかっている人は、反応が激しく変わるだけでなく、特異な反応を見せることが多い。

これは、治療師の手が、患者の意識と潜在意識の両方に反応するためのようだ。意識と潜在意識の間に乖離がない患者、言い換えれば、自分自身の心がよく分かっている患者は、反応が安定していて治療しやすい。ところが、脳の機能低下が関連していると思われる病気、言い換えれば、精神的なものが関連すると思われる病気にかかっている人は、自分の心が分かっていない場合が多く、意識と無意識の間にあるギャップのために、反応が大きく揺れてしまうことが多い。

特に難しいのは、胸部とか恥骨とかの性的な部分で、問題意識においても、無意識な心の層においても、その必要性を感じていて、かつ治療師に信頼感を感じている人は、最初からその部分を単刀直入に治療させる患者もいるが、最後まで治療させない患者もいる。

この問題に対しては、治療の効率より、患者の心を中心にした治療になってしまうが、精神的なものが関連すると思われる病気にかかっている人には、治療が終わった後、「触らせてはいけないところを、治療されてしまった」という不快感が残る場合があった。潜在意識では、受け入れているので、決定的な問題にはならないが、ある種の精神的な不快感が残るのである。

この問題を避けるため、「治療師の手が、患者の意識と潜在意識に反応して動くので、不快感を感じそうなところに手が行ったら、心の中で強く『だめ!』と言えば、手が離れる」ということを説明するようにした。

初期の頃、説明しないで治療をしていた患者に、途中で説明したところ、反応に大きな変化があるケースがあった。説明前は、恥骨を何のためらいもなく、治療させ、生理痛も著しく改善していた患者が、説明後、恥骨の治療ができなくなってしまったのだ。「精神的なものが関連する患者の心は、実にデリケートで、難しく、治療は慎重にしなければならない」ということを実感したケースだった。

このように意識下で、複雑なやりとりが行われるのは、男女間の言語外のコミュニケーションとして、気が意識下で使われているからのようだ。患者は「治してもらいたい」という気持ちがあるから、「治療に必要なら、体に触れて欲しい」という気持ちがあるが、女性として「好きでもない男性に体に触れてもらいたくない」という意識の二面性がある。この二面性が治療の中で常に綱引きをしているために、反応が揺れるのだ。

これは、女性が本質的に持つ心の二面性に関係していると思われる。お化粧やミニスカートをはいて、より多くの男性を引きつけ、近づけはするが、体を許さないのは、男性を競争させ、より強い子孫を残そうという種族保存の本能である。気は、言語が違っても、男女間のコミュニケーションを可能にし、人類という種を保存するための手段として働いている。

女性は、気に関して、特殊な能力を持っている人が少なくない。女性の中には、「気」が強く、非常に強い力で、治療師の手を、治療が必要なところに引っ張って行くだけでなく、「優しくやってね」とか「荒々しくやってね」みたいに、気で扱いかたを注文してくる人もかなりいる。手がそのように動くので、聞いてみると、そのように扱われるのが好みだという。これは、治療中に起こるだけでなく、「気が付いたら、ダイヤの指輪を買わされてしまった」などのときにも起こっているようだ。

男性に対して、最初操気整体術は使えなかった。心が潜在意識下で、男女間のように、強く作用し合わないためだ。しかし、2ヶ月もすると、気に対する感覚が敏感になって、男性も治療ができるようになった。


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