新型インフルエンザの感染予防法>第2章 変異するウイルスの脅威>1.インフルエンザA型ウイルス

1.A型インフルエンザウイルスの変異

(1)生命体は、DNAの遺伝子情報に基づいてRNAにより自己複製と代謝を行うが、A型インフルエンザウイルスには、DNAがなく、8本のRNA分節からなる核酸と、それを包む蛋白質の殻から成るため、RNAウイルスと呼ばれる。

(2)DNAは、同じ情報を持った2本のDNA鎖が対になっていて、複製にエラーが生じた場合、エラーを修復する機能を有している。

(3)RNAウイルスは1本鎖で複製エラーを修復できないことなどの理由で、DNAウイルスや真核生物の約100万倍のスピードで変異する。

その結果、感染の第1波が広がっている最中に、感染力や毒性のより強いウイルスが出現し、第2波や第3波で重傷者や死者が多発することがある。また、ワクチンの有効期間が短い。

(4)違う種類のA型インフルエンザウイルスが同じ細胞に感染すると、ウィルスの遺伝子が分節単位で組み変わり、合の子ウイルス(新型インフルエンザ)ができる。

例えば、過去にバンデミックを起こしたアジアかぜや香港かぜ、そして今回の新型インフルエンザも、この遺伝子再集合と呼ばれるウイルスの変異で生じたものである。

1957年のアジアかぜ(H2N2)は HA, NAおよびPB1遺伝子分節をトリウイルスから、PI、NP、M、NS遺伝子分節を前年流行していたイタリアかぜ(H1N1)から獲得した遺伝子再集合体(合の子ウイルス)であり、1968年のホンコンかぜ(H3N2)もHAとPB1遺伝子分節をトリウイルスから、残りの6分節を1968年以前に流行していたH2N2ウイルスから獲得した遺伝子再集合体である。

(5)同時感染したウイルスの毒性が両方とも弱い場合でも、組み合わせにより毒性の強い合の子ウイルスが生じることが実験で確かめられていることから、新型インフルエンザと季節性のインフルエンザが人に同時感染すると、毒性の強い合の子ウイルスが生じる可能性がある。

(6)豚には鳥インフルエンザと人インフルエンザが感染するため、豚に致死率が高い鳥インフルエンザと新型インフルエンザが同時感染すると、毒性の強い合の子ウイルスが生じる可能性がある。


NEXT MENU